電圧で制御する半導体デバイスで、超伝導と磁性が出会う

超伝導回路では、電気抵抗なく電流が流れます。その機能を引き出すうえで重要なのが、電流を担う電子対の集団的な「リズム」に相当する、量子力学的な「位相」の制御です。磁性を利用すると、この位相を変化させることができるため、外部磁場による制御への依存を減らした超伝導メモリや量子回路の実現につながると期待されています。しかし、磁性と超伝導の共存は容易ではありません。磁性によって電子のスピンがそろうと、超伝導電流を担う「クーパー対」が壊されることがあるためです。一方、半導体はゲート電圧で電気的な性質を調整できることから、両者の相互作用を調べ、制御する舞台として有望です。その実現には、性質の大きく異なる材料を、極めて清浄な界面で接合する技術が欠かせません。

東京大学とニューヨーク大学の共同研究チームは、これらの機能を組み合わせた半導体ハイブリッドデバイスを開発しました。原寛貴氏とLukas Baker氏を中心に、田中雅明教授、Javad Shabani教授、Le Duc Anh准教授の指導のもと、電流の通り道となる半導体・ヒ化インジウム(InAs)層の上に超伝導体のアルミニウム(Al)層を、その下に磁性半導体である鉄添加アンチモン化ガリウム[(Ga,Fe)Sb]層を形成しました。各層は、大気にさらすことなく超高真空中で連続して成長させ、界面の清浄さを保ちました。電子顕微鏡観察から、アルミニウムと半導体の間に、原子レベルで急峻かつ清浄な界面が形成されていることを確認しました。

研究チームは、アルミニウム層に幅100ナノメートルの隙間を設け、その下の半導体を橋として二つのアルミニウム電極をつなぐ構造を作製しました。「ジョセフソン接合」と呼ばれるこの構造では、電極の超伝導の性質が半導体にまで及ぶことで、半導体を介しても抵抗なく電流が流れます。絶対零度よりわずか0.03度高い30ミリケルビンでは、ゲート電極を設けていないデバイスに約3マイクロアンペアの超伝導電流が流れました。また、ゲート電極を備えたデバイスでは、負のゲート電圧によって半導体内の電子を減らすと超伝導電流も減少し、電圧による制御を実証しました。

さらに、磁場に対する特徴的な応答も観測されました。抵抗なく流せる電流の最大値である「臨界電流」は、磁場に応じて干渉パターンを示して増減し、そのパターンは磁場を掃引する向きによって異なりました。このように、それまでに加えた磁場の履歴によって応答が変わることは、超伝導電流に磁性が影響していることを示唆します。その要因として、隣接する磁性半導体によってInAs層に誘起された磁性が関与している可能性があります。また、電流を流す向きによって臨界電流が異なる「超伝導ダイオード効果」も現れ、外部磁場のもとで最大20%の整流効率が得られました。適切な大きさの電流を選ぶと、一方向には抵抗なく流れる一方、逆方向には抵抗が生じる状態を実現できます。

今回の成果は、半導体の中で超伝導と磁性がどのように影響し合うかを、電圧で調整しながら調べられる実験基盤を提供します。清浄な材料界面、ゲート電圧による超伝導電流の制御、そして磁性の影響を示す応答を組み合わせることで、量子エレクトロニクスに向けた半導体ベースの超伝導デバイスの開発につながると期待されます。

詳細は、以下の論文をご覧ください。

掲載誌: Communications Materials

論文題目: Interplay of superconductivity and ferromagnetism in ferromagnetic-semiconductor-based Josephson junctions
(磁性半導体を用いたジョセフソン接合における超伝導と強磁性の相互作用)

著者: Hirotaka Hara, Lukas Baker, Axel Leblanc, Shingen Miura, Keita Ishihara, Melissa Mikalsen, Patrick J. Strohbeen, Jacob Issokson, Masaaki Tanaka, Javad Shabani and Le Duc Anh

DOI: 10.1038/s43246-026-01393-6

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